第3章 「祈りとリズム」

 島節 

 島での生活は苦しいことや、生命の危険にさらされることばかのではなく、楽しい祝いごとも多くある。多くの祝ごとの席で、儀式がおわると、「島節」がよく歌われる。人々は車座になり、次から次へと、かってからある歌詞のもや、即興に作詞して歌うのである。島の人で「島節」の歌えない人はいないのである。この「島節」は「大島節」の旋律に歌詞だけを替えて歌う。しかし、最初の部分において、二通りの歌いかたがあり、島の人によると、譜1は女性的であり、譜2は男性的であるとのこと.男性にしろ、女性にしろどちらでも歌うのであるが、あえてこだわりをもって選んでいる人もいる。歌詞の内容に、恋の歌あり、別れの歌ありで、人々はこの「島節」を島での生活の自信と愛着をもって歌い継いでいるのである。私にとっては、「島節」を歌うことが大人への仲間入りであるように思えて、好んで歌ってきたが、最近の島の生活は、人々が車座になり、手拍子と「島ぶし」での掛け合いはなくなってしまった。ほとんどの家庭に於いて、カラオケがあり、祝の席でもカラオケ大会となる場合が多く、手拍子によるその場を共有するということは少なくなってしまった。島の男たちの、ごつい手の平による手拍子の響きも、手拍子を打つ時の一種独特の手の平のひねりも今となっては感傷として残っているにすぎないかも知れない。仲間意識をもって、海の上で共に生きてきた男達の協調の心も失われ、今ではそれぞれということが多くなってしまった。「島節」は、島の生活に於いて、参集した人々が共に歌い、相の手を入れ、手拍子によって盛り上げる共同生活体での音楽であった。酔うほどに、場が盛り上がるほどに高らかに歌い継がれてきた、人々の「島節」であったが、生活様式の変化は、「島節」さえも失おうとしている。

 *「ア ハイ ハイトー」と、歌うことを促す「手拍子とはやし」があって、 手拍子に合わせて歌う。手拍子は小節の1拍目に必ずはいる。

 「ア ハイ ハイトー」の「はやし」は、中間部においても入る。又、1番 から2番に移る時、2番から3番に移る時も必ず入る。

 *手拍子を打つと次の手拍子までの間は、両手を1〜3回程こすり間をとる。