私もそう思う

 子ども達の背後から「やっぱりね!」とか「あんなに言ったのに!」という、先生達の声が聞こえてくる。先生達のぼやきである。そのぼやきは実によく子ども達の性格を言い当てていて、私もそう思うのである。保護者はそう育てているとは思っていないと思うが、子ども達は実によく保護者の背中を見て育っているものである。子ども達の性格というか、振る舞いは実によく保護者に似ているものである。「この子にして、この保護者あり」である。いや「この保護者にして、この子あり」かもしれない。そうは思っていない保護者は哀れである。保護者は、そう思っていないかもしれないが、子どもは保護者そっくりに育っているのである。

 私達の仕事は、ある意味で人気商売である。保護者に嫌われないように、好かれるように言葉巧みに子どもを誉めなければならない。私立幼稚園の宿命である。はつきりと言うべきところは言うが、そうでないところは、なるべく誉めようとする。保護者は、「何度言っても」とか「あんなに言ったのに」とか言うが、電話での保護者の言葉使い、幼稚園にこられた保護者が脱いだ靴のそろえ方、「この保護者にして、この子あり」である。

 例えば、「私がおっちょこちょいだからこの子も…」と言える保護者の子どもは、私達にとっても気が楽である。しかし、「何度言ってもこの子は…」と言う、背中で子どもを育てようとはせず、口先で子どもを育てようとする保護者の子どもはかわいそうである。「ママがそうしているのに、僕にはそうするなと言う」。子どもは戸惑うばかりである。そして、先生達はそのことを見透かしているのである。しかし、はっきりと言えないのが私達先生の宿命である。