私達に時間を下さい

 どのくらい前のことでしょうか。かれこれ10年は経っていると思います。内容には多少異なりはあるものの、似たり寄ったりのことは最近では日常茶飯事です。この時のような「いじわるされる」「遊んでもらえない」と、相談を持ち込まれることはここ10年たいへん多くなりました。かつては、「子ども同士のことだから」とか、「子どもにいざこざはつきもり」とか、「子どものけんかに親が口出しするな」とか、私たち教師にとってはたいへん指導しやすい環境にありました。しかし、最近は些細なことでも保護者が心配して相談にこられます。相談ならばよいのですが、相談というよりは苦情です。幼稚園は子ども達が寄り集まって仲間とより楽しく、又は、自分がどうしたら仲間の一員として協調して遊べるかということを体験を通して学ぶところです。体験を通して学ぶことですから、協調できていない子どもにとっては、「摩擦」はつきものです。「けが」も「いじわる」も当然のことです。私達は、「けが」も「いじわる」も当然の中で、「けが」も「いじわる」も最小限にして効率よく協調性を身につけさせようとしています。子ども達にとって「話してわかる」なんてことはあり得ません。体験を通して経験的に学び取ってゆきます。見て下さい。子ども達が初めての経験で、「ほどほどに」程度を考えて体験していますか。体一杯を使って体験を繰り返しています。この写真はドラムセット(貰い物)がホールに置かれた時のものです。子ども達は力の限り叩いています。壊れるとか、高価なものであるという感覚はありません。良く音の出る「もの」としか感じていません。「けじめがない」といえばそり通りです。しかし、家庭での場合、高価なソファーセットを購入したとして、「ほどほどに」程度を考えてきちんと座りましたか、よじ登ったりお菓子をこぼしたことも、ジュウスをこぼしたこともあるのではないでしょうか。大人に注意され、少しずつお行儀よくなるのではないでしょうか。幼稚園は、子どもと物の関係だけでなく、子どもと子どもの関係があり、「けが」も「いじわる」あって当然なのです。当然ではありますが、体験しながら効率よく協調性を身につけさせようとするのが幼稚園ですから、そのリスクを考えずして効果だけを期待するのは間違いです。私達は多少の「けが」も「いじわる」あったほうが良いとさえ思っています。わがままでは子どもは成長しません。「したり」「されたり」して、「ありがとう」「ごめんなさい」を知るのです。「しても」「されても」フォローし、ケアーするのが貴方や私達です。子ども一人一人の幸せを最も願っているのが貴方であり、私達です。私達に時間を下さい。子ども達と私達を見守って下さい。私達は子ども達と共に「今」を生きています。

 それにしても、子ども達は思いがけない行動をするものです。ドラムを叩くのは理解できますが、腰掛け代わりにするとは思ってもいませんでした。製作した方もそこまでは予想できなかったでしょう。結果として折れました。